本学における声楽の始まりは、音楽取調掛の「唱歌伝習」にさかのぼり、東京音楽学校時代の1900(明治33)年、声楽の専門家の育成を目指す「本科声楽部」が置かれました。本学声楽科はこのような伝統を継承しつつ、現代に求められる声楽家を育成しようとするものです。音楽学部においては、声楽家としての基礎的技術と知識を教授し、優れた声楽家としてだけではなく、智と人間性にも優れた人材を育成することを教育理念としています。演奏家としての国際性と音楽の果たす役割の重要性を認識しつつ、自らの音楽演奏行為を完成させ、心豊かな演奏を通して広く社会に貢献することのできる人間に育って欲しいと願うものです。
声楽科では、個人レッスンにおいて個々の発声等の声楽技術と音楽表現を磨くことを軸に、「合唱」「声楽アンサンブル」等のアンサンブルの授業や「オペラ基礎」「オペラ実習」等の授業を通じて、声楽家としての基礎能力と知識を習得します。演奏家としての国際性と音楽の果たす役割の重要性を認識し、演奏家同士のコミュニケーション能力はもとより、自らの演奏を通して広く社会に貢献することのできる心豊かな人材育成を目指しています。
学部4年間を通して、個人レッスンでは、発声などの基礎的な声楽技術を習得すると同時にソリストとして求められる高い音楽表現能力を学びます。また、楽曲を演奏する上で重要な音楽的?語学的知識を深め、智と人間性にも優れた音楽家を目指します。
声楽の演奏は一人ではできません。常に共演者を必要とします。そのため、1 年次から3 年次までの「合唱」、それに続く「声楽アンサンブル」「室内合唱」等、また「オペラ基礎」「オペラ実習」等の授業においては、アンサンブル能力を高めるプログラムが用意されています。これらのプログラムによって、音楽の果たす役割の重要性を認識し、自らの演奏を通して広く社会に貢献できる人材育成を目指します。
大学院では「独唱」を学びます。「独唱」ではオラトリオなどの宗教曲や歌曲などを中心に研究し、「オペラ」ではオペラ歌手としての実体験を積みます。また、「声楽特殊研究」では、日本?ドイツ?イタリア?フランス?英米の歌曲と、宗教音楽?重唱(アンサンブル)等の多くの選択肢を設けており、幅広く学ぶことができます。
修士課程、博士後期課程いずれも、自らの演奏体験から導き出された、演奏家ならではの研究分析が中心となり、特に原典研究などの論文作成に必要な外国語の知識が重要となります。
2016年春にスタートしたオペラ専攻は、カリキュラムやディプロマポリシーを含め、多くは従来どおり声楽科にならっていますが、入学試験を声楽専攻とは別に行います。これまで以上に世界の芸術機関と連携し、国際的な感覚を身につけた、優れたオペラ歌手やオペラに深く関わる人材の育成を目的としています。
従来の「オペラ歌唱」関連科目をより専門化すると同時に、各科目の連携を強化することで、オペラ歌唱に係る総合的教育を行い、オペラ史、作品分析や台本購読などによって音楽理論や他分野の芸術との関連、歴史?社会的背景などの理解を深めることを目指します。具体的には「グローバルに活躍するオペラ芸術家の個人指導による発音?発声?歌唱表現?演技等の実技研究」、「指揮やソルフェージュ、作曲、ピアノ等他専攻との連携強化による、総合芸術としてのオペラ制作」、「国内外の歌劇場との連携によるインターンシップ」、「社会と連携した芸術活動」などにより、オペラ歌手に必要な歌唱力、テクスト解釈、舞台演技、多言語に亘るディクション(舞台語発音法)をはじめ高度な専門的能力、演技の表現能力や理論等を習得することを目的としています。
本学は多くの外国の大学と姉妹校提携を結び、学生レベル及び教員レベルで多くの国際交流を重ねています。中国北京中央音楽院との声楽科教員同士による交流演奏会では、演奏会開催地を交互に行ってきました。韓国国立音楽院とは学生同士の交流演奏を重ね友情を育んでいます。またオーストリアのウィーン国立音楽演劇大学の声楽科とは、モーツァルトのオペラ「コジ?ファン?トゥッテ」を交互に学生を派遣し、混成キャストによる交流オペラ公演を行い、学生達に大きな刺激を与えました。また声楽科は修士課程への外国人留学生入学試験を毎年行い、海外の優秀な学生を受け入れています。留学生の国籍は中国?韓国が多いですが、ヴェネズエラからの留学生を受け入れた実績もあります。
学部声楽科の卒業生のうち、一割程度が大学院に進学し、さらに研鑽を積みますが、在学中教職課程を履修の上、教員免許を取得し、中?高等学校などで教職に就く数も多くいます。大学院を修了して国内外で活躍する声楽家?オペラ歌手も数多く輩出しており、本学の水準が非常に高いことを証明しています。
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